新着情報

侵襲性髄膜炎菌感染症について 

2019.03.27

侵襲性髄膜炎菌感染症について



入寮者および留学を考えている学生へ



九州大学キャンパスライフ・健康支援センター  



◆侵襲性髄膜炎菌感染症について

 髄膜炎菌感染症は、咳やくしゃみなどで誰にでも感染する可能性のある髄膜炎菌を原因とする疾患です。肺炎や関節炎、中耳炎、尿路感染症などを起こしますが、まれに菌血症や敗血症、髄膜炎、髄膜脳炎を伴う侵襲性髄膜炎菌感染症を引き起こします。

 侵襲性髄膜炎菌感染症には、急速に進行する劇症型が10〜20%程度認められており、致命率が19%、11〜19%に後遺症が残るとされています。

 2011年に宮崎県の高校の寮で発生した集団感染事例以降、全寮制の学校などでの集団感染が続いたため、2013年以降、全数把握を行う届け出疾患となりました。



国内での発生数は年間30~40例ほどですが、特に「15~19歳の思春期」で多く報告されています。

世界的には、サハラ砂漠以南の国々、“髄膜炎ベルト”と呼ばれる地域が罹患率が高く、罹患率が低い国においても、国際的で多くの人が参加して一定期間開催されるイベントでは、リスクが高まることがしられています。留学する際に入寮するような場合も該当します。

前述したように国内でも学生寮での集団感染がしばしば発生しています。このため、日本小児科学会では2017年 9月より学校の寮などで集団生活を送る者」をワクチン接種推奨の対象者としました。



◆髄膜炎菌

髄膜炎菌はヒトだけに感染する細菌で、主にのどに感染し咳・くしゃみなどによる飛沫感染によって感染が広がります。健康なヒトの中にも鼻やのどの粘膜に髄膜炎菌が存在する保菌者が一定の割合でいることが知られています。過去の調査によれば、我が国の健康保菌者は0.4%程度とされていますが、海外の保菌率は、3〜25%となっています。



以下の様な日常行動が感染リスクになります。

・ペットボトルの回し飲み      ・食器類の共有      ・キス     ・寮などでの共同生活



◆症状

発症初期は、風邪に似た発熱,頭痛,吐き気などの軽い症状のため、診断が難しく、早期に適切な治療を受けにくい病気です。その一方で、劇症型では症状の進行は極めて早く 、早期に適切な治療を受けた場合でも、発症者の5〜10%は24〜48時間以内に死亡することがあります。回復した場合でも 11〜19%の割合で四肢切断や、難聴,言語障害, 認知機能低下などの後遺症が残ります。



◆予防

ワクチン接種が有効です(任意接種)。

髄膜炎菌は、13の血清群に分類され、侵襲性髄膜炎菌感染症のほとんどはA, B, C, Y, Wの5つの血清群によるものです。我が国の2013年から2017年のデータでは、侵襲性髄膜炎菌感染症の起因菌の72.5%はY群の髄膜炎菌によるものとされています。

現在までにA、B、C、YおよびW群に対して、ワクチンが開発されていますが、日本では、これらのうちB群を除く4つの血清群に対応した4価髄膜炎菌ワクチンが利用できます。

伊都キャンパスにある伊都診療所では、4価髄膜炎菌ワクチン接種の準備を進めています。また、厚生労働省検疫所のHP(https://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination.html)で、接種可能な医療機関を検索することができます。ご相談の上、髄膜炎菌ワクチンの接種をご検討ください。



◆参考情報

 厚生労働省検疫所 海外感染症発生情報

 厚生労働省検疫所 ここに注意!海外渡航にあたって                       

 国立感染症研究所 髄膜炎菌性髄膜炎とは

 神奈川県衛生研究所 侵襲性髄膜炎菌感染症を知っていますか?



PDF版

   侵襲性髄膜炎菌感染症について

COPYRIGHT © KYUSHU UNIVERSITY INSTITUTE OF HEALTH SCIENCE.